ザ テレビジョンとレモン

ザ テレビジョンとレモン

かつて私が不動産業者でアルバイトしていた二十歳の頃。 不動産アルバイトの平凡な人生を直撃する大型台風のような出来事に遭遇してしまい その出来事が過ぎ去ってからも その後遺症で部屋の中に閉じこもって 廃人のようになってしまっていた私だった。 闇の中にひとり放りこまれてしまって どうしてよいかわからない まさにお先まっくらな状態の時だった。 そんなある日 弟が「ザ、テレビジョン」という雑誌を 何も言わずにポンと私の部屋に投げ入れたのだ。 パラパラとその雑誌をめくってゆくうちに だんだんその雑誌の内容に興味を持つようになって ちょっと見てみっか。なんていう気になって 自分の部屋にあった小型のテレビをつけた。 そのテレビに夢中になれて 重苦しい現実からしばし解放されたようだった。 不動産情報なんかみてしまうと、ちょっと思い出して嫌な思いもあったりするけど。 もともと単純でミーハ―だった私。 そんな私にテレビは、うってつけ治療薬になってくれた。 弟は姉の私のことをよくわかっていたのかもしれない。 今思えばあれは弟のせいいっぱいの私に対する励ましのつもりだったのだろう。 うぅぅぅぅぅ。今ごろ胸がジンとなっている。 それからしばらく弟は毎週そのテレビジョンを買ってきてくれるようになった。 そのうち私もだんだん気持ちがしゃんとし始めた。 気がつけば大丈夫になっていた。 弟が買ってきてくれたあの日の「ザ、テレビジョン」は 私が立ち直るきっかけになってくれたというか 手助けをしてくれたと思う。 その時のお礼もまだ言えていない私だけど。 それからずっと長い間 「ザ テレビジョン」は私の愛読書になっていた。 当時の「ザ テレビジョン」の表紙を飾るスターたちは 必ずみんな手にレモンを持っていた。 そういえば最近さっぱり読まなくなった。 今はどうなのだろう?相変わらずレモンを持っているのかな? 今度確かめてみよう。

そうだ、不動産情報も見てこよう。